ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣
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一方、一パーセントの改善は目立たないし、 気づかれないことさえある。 ところが長い目で見てみると、 はるかに大きな効果を発揮する。 小さな改善が長い時間をかけてもたらす変化は驚くほどだ。 計算してみよう。もし毎日一パーセントよくなったら、 一年後には三七倍よくなるだろう。 逆に、毎日一パーセント悪くなったら、一年後にはゼロ近くになってしまう。 小さな勝利もささやかな敗北も、積み重なればはるかに大きなものになる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 20ページ もし良い習慣を身につけることや、悪い習慣を断つことに苦労しているなら、それは進歩する能力がないからではない。たいていは、 「潜在能力のプラトー」 をまだ超えていないせいだ。 懸命に努力しているのに成果が出ないと愚痴をこぼしているのは、温度をマイナス三度からマイナス○五度に上げて角氷が解けないと文句を言っているようなものだ。 努力は無駄にはなっていない。蓄積されているだけだ。 すべての変化は摂氏〇度で起こる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 27ページ 大きなことはすべて小さなことから始まる。 あらゆる習慣の種は、たったひとつの小さな決断だ。 だがその決断が繰りかえされると、習慣は芽を出して力強く成長する。 根をはり、枝を伸ばしていく。 悪い習慣を断つことは、自分のなかにある頑丈なオークの木を引き抜くようなものだ。 そして良い習慣を身につけることは、デリケートな花を一日一日着実に育てていくようなものである。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 29ページ ・目標は本を読むことではなく、 読書家になることである
・目標はマラソンに出ることではなく、ランナーになることである
・目標は楽器の演奏を習うことではなく、音楽家になることである
行動は、たいていアイデンティティーの反映だ。 あなたがすることは、意識的であれ、無意識であれ、自分はこういうタイプの人間だと信じていることを示している。 研究によれば、 人は自分のアイデンティティーのある側面をいったん信じたら、その信念に合うように行動しがちだという。 たとえば、 「自分は有権者だ」と思っている人は、ただ「投票したい」と言っている人より、 投票する確率が高い。 同様に、 運動がアイデンティティーの一部である人は、トレーニングするよう自分に言いきかせる必要がない。 正しいことをするのは簡単だ。 つまり、 行動がアイデンティティーと完全に一致すれば、 もう行動変化を追い求めなくてもいい。これが自分だと信じているタイプの人らしく、 行動するだけだ。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 44ページ 行動を繰りかえせば繰りかえすほど、 その行動に関係するアイデンティティーが強められていく。じつは、「アイデンティティー」 という言葉は、もともとラテン語で「存在」という意味の「エッセンティータス」と、「繰りかえし」という意味の「イーデンティーディム」 を語源としている。 つまり、 アイデンティティーとは、文字どおり 「繰りかえす存在」 のことである。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 47ページ つまり、習慣はアイデンティティーを変える道だといえる。 あなたの人となりを変えるもっとも効果的な方法は、行動を変えることだ。一ページ書くたびに、 あなたは作家になる・ バイオリンの練習をするたびに、あなたは音楽家になる・トレーニングを始めるたびに、 あなたはアスリートになる・ 従業員を励ますたびに、あなたはリーダーになるジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 49ページ どの習慣も成果を生むだけではなく、はるかに重要なことを教えてくれる。 それは、 自分自身を信じることだ。 実際にこういうことができると信じられるようになってくる。 票が集まり、証拠が変わりはじめると、自分に語りかける言葉も変わりだす。 もちろん、これは逆の方向にも働く。悪い習慣を選ぶたびに、そういうアイデンティティーに一票を投じることになる。 ただありがたいことに、 あなたは完璧でなくてもいい。どんな選挙でも、両方のサイドに票が入るものだ。 選挙に勝つには、満場一致ではなく過半数の票が必要なだけだ。よくない行動や無意味な習慣に数票入れてしまってもかまわない。 目標は、 そのときの大部分を勝ち取ることだ。 新しいアイデンティティーには新しい証拠が必要だ。 いつもと同じ票を入れつづけていれば、いつもと同じ結果を得るだろう。 何も変えなければ、 何も変わらない。 以下がシンプルな二段階のプロセスである。 一、 どのようなタイプの人になりたいかを決める二、 小さな勝利で、 自分自身に証明するジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 49ページ 良い習慣形成とは、いわゆる仕事術をやみくもに取り入れることではない。 毎晩歯をフロス(糸ようじ)で掃除することでも、毎朝冷たいシャワーを浴びることでも、毎日同じ服を着ることでもない。 もっと稼いだり、体重を減らしたり、ストレスを軽減したりというような、目に見える成功を達成することでもない。 習慣はこれらを達成するのに役立つが、 本来は、何かを手に入れるためにするのではない。 習慣は、誰かになるためにするものだ。 突きつめれば、習慣が大切なのは、なりたいタイプの人になるのに役立つからだ。習慣は、自身についての深い信念を育てるための手段である。 まさに文字どおり、 あなたが習慣になるのである。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー・52ページ 習慣は自由を制限しない。 自由を作りだしている。 それどころか、習慣をうまく活かせない人の多くは、自由がほとんどない。 良い金銭習慣がなければ、いつもお金に困っているだろう。 良い健康習慣がなければ、いつも元気がなさそうに見えるだろう。 良い学習習慣がなければ、いつも後れをとっているように感じるだろう。また、いつ運動したらいいか、どこへ書きにいけばいいか、いつ支払いをすればいいかなど、些細なことでいつも決断を迫られていれば、 自由のための時間が少なくなってしまう。 基本的な生活を簡単にすることでのみ、自由な思考や創造性に必要な心の余裕を持つことができる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー・58ページ 要約すれば、きっかけが欲求を引き出し、 欲求が反応を起こさせ、 反応が報酬を与え、 報酬が欲求を満たし、そして最終的に、 きっかけに結びつく。 このように四つのステップが、 「きっかけ、 欲求、 反応、報酬」、再び「きっかけ、欲求、 反応、報酬」、という神経系フィードバックループを形づくり、結果として自動的に習慣ができあがる。 このサイクルは 「習慣ループ」として知られている。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー・64ページ 習慣を引き起こすきっかけは、 さまざまな形でやってくる。 ポケットで震えるスマートフォンだったり、チョコチップクッキーの匂いだったり、 救急車のサイレンの音だったりする。 しかし、もっともよくあるふたつのきっかけは、時間と場所である。 実行意図はこれらきっかけの力を強めてくれる。 おおまかにいえば、実行意図を作るための公式は、 「Xという状況が起こるとき、 わたしは Yという反応をする」である。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー ・ 83ページ 結論ははっきりしている。 いつ、どこで新しい習慣を行うか明確な計画を立てる人は、 最後までやり通す可能性が高い、ということだ。 この基本的な点をはっきりさせずに、習慣を変えようとする人があまりにも多い。 「もっと健康的な食事をしよう」 「もっと文章を書こう」と自分に言い聞かせながら、いつ、どこで、その習慣を始めるのかは言おうとしない。 「思い出したらやろう」 とか、 適切なときにやる気になるだろうとか、チャンスや希望にまかせている。 実行意図は、 「もっと運動したい」 「もっと成果をあげたい」「投票しなければ」という曖昧な考えを一掃し、具体的な行動計画に変えるものだ。 モチベーション不足だと感じるとき、じつは足らないのは明確さであることが多い。 いつ、どこで行動するか、たいていはっきりしていない。なかには、改善するのにふさわしいときを一生待っている人もいる。 いったん実行意図が決まると、やる気がわいてくるのを待つ必要はない。 「今日、一章分書くか、やめておこうか? 今朝、瞑想しようか、それとも昼休みにしようか?」 などと、 そのたびに決める必要もない。 あらかじめ立てた計画にただ従うだけだ。 この方法を習慣に適用するには、次の文を完成させるだけでいいわたしは〈いつ〉〈どこで〉〈何を〉 する。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー ・ 83ページ ディドロの真紅のローブは美しかった。 むしろ美しすぎて、 自宅の平凡な家具に囲まれていると、 どれほど場違いかありありとわかった。 豪華なローブと自分の持ち物とのあいだには、 「協調もなく、統一感もなく、美しさもない」と彼は書いている。 やがて、 自分の持ち物をもっと高級なものにしたくなってきた。カーペットをダマスカス産の絨毯に取りかえた。 高価な彫像を家に飾った。 鏡を買ってマントルピースの上に置き、上等なキッチン・テーブルを買った。 麦わらの椅子を捨てて、 革の椅子を置いた。 ドミノ倒しのように、ひとつ買えば、次を買いたくなった。 ディドロの行動は珍しいものではない。じつは、ひとつの購入がさらなる購入を呼ぶ傾向には、 ディドロ効果という名前がある。 ディドロ効果とは、 新しいものを手に入れると、しばしば消費のスパイラルが生まれ、さらに買いたくなることをさす。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 86ページ 新しい習慣を身につけるという点から見れば、この行動の結びつきをうまく利用することができる。 新しい習慣を身につける最善の方法は、 すでに毎日行っている現在の習慣を確認し、その上に新しい習慣を積み上げることだ。これを「習慣の積み上げ」 と呼ぶ。 習慣の積み上げは、 実行意図の特殊な形だ。 新しい習慣を特定の時間や場所と組み合わせるかわりに、 現在の習慣と組み合わせる。 この方法は、B・J・フォッグが「小さな習慣 Tiny Habits」 プログラムの一部として創案したもので、ほとんどすべての習慣の明確なきっかけとして利用できる (フォッグはこの方法を 「小さな習慣の秘訣」 と呼んでいるが、本書では習慣の積み上げの公式と呼ぶことにする)。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 89ページ できればいつでも、ひとつの習慣の背景と他のものとが混ざらないようにしよう。 背景が混ざると、習慣も混ざりはじめる。 そして、 やりやすい方が勝ってしまう。 現代テクノロジーの多用途性に長所と短所があるのも、これが理由である。 スマートフォンはさまざまな使い方ができる強力なデバイスだ。 でも、なんでもできる機器を使っていると、ひとつの作業と結びつけるのが難しくなる。 生産的でありたいのに、見るたびにソーシャルメディアを眺めたり、メールをチェックしたり、ゲームをしたりする癖がついてしまう。きっかけが、 ごちゃ混ぜになっているからだ。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 106ページ ところが最近の研究では、ちがう結果が示されている。 非常に自制心がありそうな人々を分析すると、そのひとりひとりは、自制できずに苦しんでいる人と大して違いがないことがわかった。 そのかわり、 「自制心のある人は、たいそうな意志や自制心がいらないように、生活を設計することに長けていた。いいかえれば、誘惑的な状況には、なるべく身を置かないということだ。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 109ページ どの動物の脳にも、 ある行動のルールが組みこまれていて、 誇張されたルールに出くわすと、 クリスマスツリーのように輝くらしい。 科学者は、この誇張されたきっかけを「超正常刺激」と呼ぶ。 超正常刺激とは、赤い斑点が三つあるくちばしや、 バレーボール大の卵のように現実を誇張したもので、通常より強い反応を引き起こす。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 117ページ まわりを見てみよう。 社会は高度に作りかえた現実でいっぱいで、 祖先が進化してきた世界よりも魅力的だ。店は、誇張したヒップとバストのマネキンを店頭に並べて服を売ろうとする。 ソーシャルメディアは数分のうちに、会社や家で得られるより多くの 「いいね!」や賞賛を与えてくれる。 インターネットのポルノは、現実の生活ではありえないほど刺激的なシーンをつなぎ合わせている。 広告は、 理想的な照明や、プロによるメイク、 画像処理ソフトの編集によって作られ、 モデルでさえ本人とは思えない画像が出来上がる。これらは現代社会の超正常刺激である。 それは自然でも魅力的なものをさらに誇張して、 わたしたちの本能を熱狂させ、買いすぎや、 ソーシャルメディア漬け、ポルノ視聴、 食べすぎ、 その他の習慣へと向かわせる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 119ページ 一般に、誰かと近しいほど、わたしたちはその人の習慣をまねしやすい。 一万二〇〇〇人を三二年間追跡調査した画期的な研究で、次のことがわかった。 「肥満になった友人がいると、 自分も肥満になる確率が五七パーセント増加する」。 この逆の作用もある。 別の研究では、 恋人がやせると、 相手も約三分の一の割合でやせるという。 友人や家族は、目に見えない一種の同調圧力によって、 わたしたちを引き寄せようとする、ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 133ページ お金。貯金はたいてい犠牲を伴う。でも、ある簡単な事実を認めれば、 貯金を制約ではなく、 自由と結びつけることができる。 つまり、 今持っている資金より少ないお金で生活すれば、 将来の資金が増えるということだ。 今月貯めたお金は、 来月の購買力を増やしてくれる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 150ページ 意向が結果につながらないなら、 なぜわたしたちは意向を持つのだろう。 たしかに計画を立てたり、もっと学習したりすることが本当に必要なときもある。 でもたいていは、 意向を持つことで、 失敗の危険を冒さないまま進歩している気になれるからだ。 批判を避けるのが得意な人は多い。 失敗したり、まわりから非難されたりするのは嫌なので、そうなりかねない状況を避けようとする。 そして、行動よりも意向へと陥ってしまうもっとも大きな原因は、失敗を遅らせたいという気持ちだ。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 157ページ わたしはよくこの戦略を 「引き算による足し算」 と呼んでいる。 日本の企業は生産工程で抵抗となっているものをすべて洗い出し、取り除いた。 ムダな労力を減らしながら、顧客や収益を増やした。 同じように、 わたしたちの時間やエネルギーを奪う抵抗を取り除けば、少ない労力で多くを達成できる。 (片づけると気分がよくなるのはこのためだ。 前へ進むと同時に、環境による認知的負荷を軽くしている)ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 170ページ わたしはよく、一息入れるたびにソーシャルメディアに惹きつけられる。 ほんの一瞬でも退屈だと思うと、スマートフォンに手をのばす。 このささやかな気晴らしを 「ちょっと休憩してるだけさ」 とすませることは簡単だが、やがて積み重なれば深刻な問題になりかねない。 「もう一分だけ」 といつも引き伸ばしてしまい、大事なことが何もできなくなってしまう。 (わたしだけではない。 人は平均して一日に二時間以上、ソーシャルメディアで時間をつぶしている。一年に六○○時間も余分にあったら、 どんなことができるだろう?)ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー • 195ページ いちばん驚いたのは、思ったより早くそれに慣れたということだ。 ソーシャルメディアを断った最初の週に、今までのようにしょっちゅうチェックする必要などない、 とくに毎日する必要はないと気がついた。 あまりにも簡単に見られたから、 毎日するのが当然になっていただけだ。 悪い習慣が不可能になると、有意義な作業をしようというやる気が、 自分にはちゃんとあることがわかった。 環境から心理的なキャンディーを取り除いたら、 健康的なものを食べやすくなったというわけだ。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 196ページ わたしはこのテクニックを、ペーパークリップ戦略と好んで呼んでいる。 そして数年間のうちに、読者からさまざまな形の体験談を聞いた。 ある女性は本の原稿を一ページ書くごとに、ヘアピンを箱からもうひとつの箱へ移していった。 別の男性は腕立て伏せを一セットするごとに、ビー玉をビンからもうひとつのビンへ移していったという。 進歩すると満足感を得られるし、 クリップやヘアピンやビー玉を移していくように、目に見えるものでその量を測ると、 進歩した証拠がはっきりと表れる。 すると行動が強化され、 どんな行動でもわずかな達成感がすぐに得られる。 目に見える測定法には、さまざまな形がある。 食事日記、運動記録、ポイントカード、プログレスバーのソフトウエア、 本のページでもいい。 だが、 進歩のようすを測る最善の方法は、「習慣トラッカー」 を使うことだろう。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 212ページ 習慣トラッカー" とは、習慣を行ったかどうかを測るシンプルな方法である。もっとも基本的なやり方は、カレンダーを買い、ルーティンを守った日を線で消すことだ。 たとえば、 月曜日、水曜日、金曜日に瞑想したなら、それぞれの日付に×印をつける。 やがて、 カレンダーは習慣の連続を記録したものとなる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー ・ 213ページ まとめれば、習慣トラッカーは、(一)行動を思い出させるような、目に見えるきっかけを作る。 (二)自分の進歩のようすが見えると、それを失いたくないので、 自然とやる気が出る。 (三) 習慣の成功をひとつ記録するたびに、達成感を得られる。 さらに習慣トラッカーは、なりたいタイプの人に票を投じているという証拠になる。これはうれしいもので、すぐに得られる本質的な喜びだといえる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー ・ 216ページ これは時に「グッドハートの法則」 と呼ばれる。経済学者チャールズ・グッドハートにちなんで名付けられたもので、その原理はこうである。 「測定が目標になれば、それはもう良い測定ではなくなる」。 測定値は、ガイドとして大きな目標へ向かわせるときに役立つのであり、 あなたを消耗させるなら、なんの役にも立たない。 それぞれの数値は、 仕組み全体におけるひとつの評価にすぎない。 わたしたちが住むデータ駆動型の世界では、数字を過大評価し、一時的で微妙で測りにくいものを過小評価しがちだ。 測れる要素だけが存在する要素だと誤解してしまう。 でも、測れるからといって、重要なものとはかぎらない。また、測れないからといって、重要でないとはかぎらない。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 222ページ 遺伝子はあらゆる習慣の表面下で働いている。実際は、 あらゆる行動の表面下で働いている。 遺伝子は、あなたがテレビに費やす時間から、結婚や離婚の可能性、薬物やアルコールやニコチンの依存症になる傾向まで、あらゆる点に影響することがわかっている。 権力に対して従順か反抗的か、ストレスに弱いか強いか、積極的か消極的か、 音楽鑑賞のような感覚的な経験に魅了されるか退屈するかにさえ、 強い遺伝的要素がある。ロンドンにあるキングス・カレッジの行動遺伝学者ロバート・プロミンは、わたしにこう言った。「今はもう、特性に遺伝的要素があるかどうか調べるのはやめる時期だよ。 遺伝子の影響を受けない特性なんて、まったくひとつも見つからないんだから」ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 236ページ 遺伝的特性が独特にからみあって、 あなたを特定の性格へと導く。 あなたの性格は、どんな状況でも変わらない特徴の組み合わせである。もっとも信頼できる性格特性の科学的分析は、 「ビッグ・ファイブ」として知られている。これは、性格特性を五つの因子に分解する方法だ。 経験への開放性―この因子が高ければ好奇心や創造力が豊かになり、低ければ慎重で保守的になる。 二、 誠実性高ければまじめで効率重視、低ければのんきで気まま。三、外向性——高ければ社交的で活動的、低ければ控えめで孤独を好む(外向性と内向性として、よく知られているだろう)。四、協調性———高ければ親しみやすく思いやりがあり、低ければ気難しくて人と距離を置く。 五、 神経症的傾向—高ければ不安が強く神経質、低ければ自信があり穏やかで落ち着いている。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 237ページ この最初の探索期間のあと、 見つけた最善策に焦点を合わせる。 ただし、 ときどき試すことも続けながらだ。バランスの保ち方は、 あなたが勝っているか負けているかによる。もし今勝っていたら、どんどん開発していこう。今負けていたら、どんどん探索していこう。 長期的に見てもっとも効果的な戦略は、八〇~九○パーセントの時間でできるだけの結果を出し、 残りの一〇~二〇パーセントの時間を探索に使いつづけることだ。有名な話だが、グーグルでは社員に、仕事時間の八〇パーセントを正規の仕事に、二〇パーセントを自分で選んだプロジェクトに使うよう促している。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 241ページ マーティンのように習慣を続けられる人がいるのはどうしてだろう。 ジョークの練習であれ、 漫画を描くことであれ、ギターを弾くことであれ、ふつうの人はモチベーションを保つのに苦労するのに、この人たちはなぜ続けられるのか? しだいに消えたりせず、夢中になれるような習慣をどうやったら身につけられるのか? 科学者はこの疑問について長年研究してきた。 まだ調査すべきことは多くあるが、もっとも一貫性のある結果によれば、モチベーションを維持し、 願望を最大限にかなえる方法は、 「ちょうどいい難しさ」の作業に取り組むことだという。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 248ページ 成功をもっとも脅かすものは、 失敗ではなく退屈だ。 わたしたちは習慣が楽しくなくなると飽きてしまう。結果も予想がつくようになる。 そして習慣がつまらなくなると、 新しいものを求めようとして進歩から脱線しはじめる。おそらくこれが、ひとつの運動から次のものへ、ひとつのダイエットから次のものへ、ひとつのビジネスアイデアから次のものへと移っていく、 終わりのないサイクルにはまってしまう理由だろう。ほんの少しでもモチベーションが下がると、 今までのやり方にまだ効き目があっても、新しい戦略を探しはじめる。思想家マキャベリはこう記している。 「順調な人が、順調でない人と同じくらい変化を望むほどに、人間は目新しさを求めるものである」ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 254ページ 心理学では、 これは 「変則報酬」 として知られている。 スロットマシンは、現実の世界でのもっともいい例だといえる。 ときどき大当たりするが、その間隔は予想できない。 報酬が得られるペースはさまざまである。この変則性が大量のドーパミン放出を促し、記憶を強化して、習慣形成を早めることになる。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 254ページ 解決法は、アイデンティティーのひとつの側面だけに、 あなたの人となりの大部分を占めさせないことだ。投資家のポール・グレアムの言葉を借りれば、 「アイデンティティーを小さく保つ」ことである。ひとつの信念だけで自分を定義したら、 人生で試練が起きたときに、 適応できるものがほとんどなくなるだろう。 ポイントガード〔バスケットで得点もあげるガードのポジション〕や会社の共同経営者でいることにすべてを注いでいたら、 人生からその一面がなくなったとき、 あなたは打ちのめされてしまう。 もし完全菜食主義者で、健康状態のために食事を変えなければならなくなったら、 あなたはアイデンティティーの危機に直面するだろう。 ひとつのアイデンティティーに頑なにしがみつきすぎると、壊れやすくなる。 そのひとつのものを失えば、 自分自身を失ってしまう。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 269ページ 感情が行動を起こさせる。 どの決断も、 ある程度は感情的な決断だ。 どれほど論理的な理由があろうと、 感情のせいで行動したくなっただけである。 実際、 脳の感情中枢にダメージを受けた人は、 行動する理由がたくさんあっても行動しようとしない。 行動を促す感情がないからだ。 だからこそ、 反応のまえに欲求がある。まず感情が起こり、それから行動が起こる。 感情的になったあとに合理的かつ論理的になれる。脳の主なモードは感じることである。 考えることは二番目だ。 脳内で最初に反応する、 早くて無意識な部分は、感覚と予測に最適化されている。 二番目の遅くて意識的な部分が、 「考える」 部位である。ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 / ジェームズ・クリアー 280ページ